カナダで2011年5月総選挙が行われました。内外のニュースの中心は与党保守党の単独過半数獲得。これで少数与党の不安定さが消え、安定な政権に移るというもの。ただ、同時に、もっと大きな変化は、新民主党の大躍進だと思います。これは、今後のカナダの動きを見る上で目が放せません。
ちなみに下記はWikipediaから転載した新民主党の過去からの議席数。今回の議席数がいかに飛躍的に伸びたかを感じさせます。
新民主党の基盤は、
1)労働者
2)マイノリティー(カナダではVisible Minorityと呼ぶ)
3)若者
特に、党首である、ジャックレイトン(Jack Rayton)氏の人気が高い。
今回の選挙の躍進の理由は、ケベック州でケベック独立を支持するブロックケベコアがこれまでの50近くの議席を一気に4まで減らしたこと。
ほかの要因ははっきりとは見えていませんが、若者の人気と、そしてマイノリティー=移民の増大が背景にあると思います。(カナダは移民から市民権を取るのはそれほど難しくない。)
カナダの今後を占うのには2つの視点があると思います。そしてこれは先進国にほぼ共通の課題であり、特にカナダは顕著になる可能性があるもので、先進国の将来を見るのに一つの重要な視点を与えてくれます。
①貧富の差がこれからも増大するのか?
カナダは隣国にアメリカを持つ小国。そのため一部の強い国際企業(BlackberryのRIMとか自動車部品のMagnaとか)は強いですが、それ以外の企業は国内市場だけでは大きくなれず決して強くありません。北欧や韓国にも通じる姿だと思います。
そのため、国際競争の高まりとともに自然に一部の生き残る層と、その他の貧しくなる層に分かれていきます。そしてその失業は若者から起こっていきます。そのため、労働者、若者を基盤に持つ同政党は確実に議席を伸ばしていくと思われます。そして政権をとると北欧のような福祉国家になっていく可能性があります。
②移民とVisible Minority
カナダは世界でも移民を積極的に受け入れている国の一つです。
カナダ統計局によると2031年に人口の半分近くが移民か片親が移民になるとあるります。すでに現在大都市では、トロント63%、バンクーバー59%とマイノリティーの数の法が多い位です。
参考:http://canadashakaiko.canadajournal.whitesnow.jp/?eid=58
私自身もアメリカからトロントに行く飛行機で半数くらいが中国人(しかも大陸の中国人)を見たり、バンクーバーでおそらく世界で最大級の中華街(というかほとんど台湾か香港)を見たりして、その勢いに驚かされました。
ちなみに、新民主党党首の配偶者は、Olivia Chowという香港系移民のトロント市会議員。
ここからもカナダの将来の姿がうかがえます。
カナダは、アメリカともっとも長い国境線を接する国。その国が、キリスト教でもない、白人でもない国になってしまうと安全保障上相当危険な状態になります。その状況がおとづれる日は決して遠い未来ではないと思います。
(右写真 Wikipedia)