パキスタンは、国際ニュースの常連ですが、その背景はニュースによって異なります。
1)タリバンが潜伏する地域との闘争
2)欧米に近い政府(パキスタン人民党等)の要人と民衆の軋轢
3)核保有とアメリカCIA
4)インドとの紛争
5)中国支援
これらに、この地域が持つ、民族、宗教、歴史、および大国とインドの関係が影響し、非常に複雑な状況になっています。
まず、民族についてですが、パンジャブ(Punjab)7600万、とパシュトゥーン(Pashtun)3500万が2大民族です。パシュトゥーン人は、アフガニスタンでは最大民族。政府、軍で要職についている人も多い。
それ以外に、アフガニスタン国境沿いにFATA(連邦直轄部族地域)という少数部族が住む地域があります。人口は数百万と少ないが、タリバン(Tehrik-i-Tariban)の潜伏地域になっている。
<支配層と欧米との関係>
イギリスが統治していた関係で、富裕層(地主など)は、欧米に留学に行く人も多い。パキスタン人民党(PPR)のズルフィカーリアリブット(Zulfikar Ali Bhutto)はアメリカバークレー出身。娘で首相を務め、2007年に暗殺されたベーナズィールブッド(Benazir Bhutto)はイギリスのオックスフォード出身。当然欧米との距離が近くなりますが、民衆からは反感を買う原因になっています。
<インドとの対立>
インドと宗教対立から分離独立。当然インドとの関係は悪く、かつ、カシミールをめぐる領土争いは紛争を超えて戦争状態。核保有の対立も続き、すでに100発を超える核弾頭があると言われています。そのため、軍隊に対する予算は多く、世界7番目の軍隊を保有。国連軍への派遣も多い。それが、軍隊の国内政治でのプレゼンス向上につながっています。
国際関係はさらに複雑。もともとソ連がインドを支援していた関係で、アメリカはパキスタンを支援。中国もインドとの対立に加え、アラブへの米国との覇権争いで、パキスタンを支援。パキスタンは中国と国境を接する国のひとつで、中国にとっては、アメリカの軍隊がそこに滞在するのは危険であるのも事実。ただ、一方で、ウイグル問題を抱えている中国はパキスタンでテロが増え、イスラムの民主革命が起こるのは喜ばない状況です。
<アラブとの関係>
アラブとはイスラム教でつながっています。要人のドバイへの留学なども多くあります。また、核開発の資金はサウジアラビアから出ているとも言われています。今後、アラブの民主化が進み、民衆に選ばれた政権が大きく反米に振れたときにパキスタンから一気に核が拡散する可能性も十分考えられます。
インドとの対立は、パキスタンの謀報組織の発達も促進しています。そのため、謀報機関であるISI(Inter Service Intelligence)は国内政治で大きな影響力を持っています。ソ連のアフガン侵攻時はアメリカCIAと協力していていましたが、現在は関係は複雑化しています。
一方で、アメリカのCIAもパキスタンの核保有の問題や、そのおかれている国際上の位置から、謀報活動を活発化。今年前半には一部のスタッフ(Raymond Davis)が殺人事件を起こし国際ニュースになっています。