世界には多くの宗教対立があります。イスラム教とキリスト教、ヒンドゥー教やユダヤ教、キリスト教とユダヤ教、キリスト教の宗派間など、これらの宗教が同居するほぼすべての地域で対立しているといっても過言ではないと思います。
しかし、仏教は他宗教との争いは少ない宗教です。おそらく仏教徒そのものの人数が少ないことがその理由かも知れないし、仏教は個人の悟りを目的としており、異教徒への強制活動が少ないという宗教上の性格もその理由かも知れません。
ただ、その中で数少ない争いが、スリランカで長期にわたって起こっていた内戦です。このスリランカの内戦事情を知ることは、西側諸国の建前を利害の一部を垣間見ることが出来ます。
下記に記載した一連のブログにかなり詳しく理由が載っています。
http://tanakaryusaku.seesaa.net/category/6453740-2.html
http://d.hatena.ne.jp/ajita/20080604/1212583776
http://blog.goo.ne.jp/bucchid/c/88427c86b1c2433a2e65eb1c95881c06
それらの理由を私なりにまとめると以下のようになります。
1)1800年代後半にイギリスがスリランカを占領。その際にキリスト教を持ち込もうとしています。私の推測ですが、島国でもあるスリランカは、そのキリスト教による征服と、異教の信仰を強制されることに恐れを覚え、仏教徒が大きく抵抗したと思います。
仏教徒は抑圧に対しては抵抗します。それはチベットやその他中国の仏教宗派でも起こっています。
2)1948年の独立後、タミル人のヒンドゥー教が独立を求めました。スリランカではタミル人はマイノリティーですが、インドのTamilnadu州など隣接する州には6200万のタミル人が住んでいます。一方のスリランカは2000万の人口の約70%の1400万人が仏教徒ですので、視野を少し広げるとこの地域には圧倒的にタミル人が多いということになります。従って、タミル人はスリランカでは少数派ですが、インドも入れると地域の多数派になります。
それがスリランカの仏教徒に危機感を強くさせている原因になり、結果、政府は独立を抑え込もうとしました。
3)その結果、仏教徒である政府軍が、タミル軍であるLTTE(タミール・イスラム解放の虎)を攻撃、撃滅しようとし、対抗勢力はそれに断固として戦うという悪循環の構図が生まれました。
4)スリランカの仏教徒は、かつてイギリスのキリスト教と対立した歴史を持ち、かつ、インド南部にはキリスト教徒も多い。(上記Tamilnadu州横のKerela州などは人口の2割がキリスト教徒。同サイトに詳しい) http://www.wako.ac.jp/souken/touzai_b04/tzb0406.html
そのため、西洋のニュースは全般にLTTE側に立って記載されることが多く、その構図は、圧制を引く政府が少数の独立運動を軍隊で押さえつけているというものになります。これが場所を変えると同じ構図でも、テロと戦う政府ということになります。ちなみにスリランカは選挙制度のある民主主義国家です。
その国際世論(=欧米世論)の後押しもあり、LTTEはその活動を続けることが可能になり、内戦が長期化しました。
2009年、26年にわたる内戦が終止符を打ったと発表がありました。国連はその後、実態を調査、2011年4月にその報告が出てきています。公平に言えば、LTTEのゲリラと政府側の無差別殺人という戦争の中で、決して簡単に終結するものではないと思われます。
(CNN-2011年4月20日) 2009年5月に終結したスリランカ内戦での戦争犯罪を調べていた国連調査委員会が、同国政府軍による砲撃などで多数の市民が死亡したとする報告書を出した。スリランカ紙アイランドが報告書の一部を入手したとして伝えた。
報告書の内容は先週、同紙ウェブサイトに掲載された。それによると、内戦が最終局面を迎えた09年1月から5月にかけ、政府軍は「安全地帯」として市民を避難させていた地域で大規模な砲撃を繰り返した。「砲撃は国連の拠点や食料配給の列、負傷者らを避難させようとしていた国際赤十字の船の近くにも及んだ」「内戦末期の市民犠牲者の大半は政府軍の攻撃によるもの」としている。
報告書によれば、反政府武装組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が市民を「人間の盾」として利用する一方で、政府軍は故意に前線の病院を砲撃したり、戦闘地域に残る市民の数を少なく見積もることで食料、医薬品の供給を妨害したという。
これに対してスリランカ政府は、報告には「根本的な欠陥」があると反論。報告書は「明らかに偏った情報を確認もせずに根拠としている」などと非難した。ラジャパクサ大統領は、5月1日のメーデーに予定されている集会を国連への抗議行動に変更する意向を示している。
調査委員会は昨年、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が任命した3人の委員で構成。報告書ではLTTEと政府軍の双方に重大な戦争犯罪の疑いがあると結論付け、LTTE幹部のほか政府軍司令官、政府高官らの刑事責任を追及している。