ナイル川をめぐる水の争いが始まっている。
これは今後増加するであろう水をめぐる争いを見る上で見逃せないニュースだと思います。
ちなみにナイル川は青ナイル(Blue Nile)と白ナイル(White Nile)の2本の支流がスーダンで合流し、エジプトに流れます。その水量は1959年の規定締結の際に、840億立方メートルと規定しています。一方、水量は白ナイルは、1年間に換算すると増水期が214億、渇水期で31億立方メートルになります。(増水期の3月には約680立方メートル/秒であり、渇水期の8月には約99立方メートル/秒。)また、青ナイル川の流量は年間換算35億立方メートル(約113立方メートル/秒)。従って、ナイル川の流量のうち、白ナイル川からのものが7割から9割をしめます(この数量だけ単純に足しても850億にはなりません)。ただ、雨季には青ナイル川の流量は大きく増大し、8月の青ナイル川流量は約5,600立方メートル/秒(1ヶ月だけで145億立方メートル)以上となります。この雨季の水量が今回の水争いの際に、かなり重要ポイントとなります。
ナイル川の上流の国には, 白ナイル川は、タンザニア、コンゴ、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、があり、青ナイル側にエチオピア、エリトリアがあります。そして下流の国は、スーダンとエジプトです。
1959年にこれらの国々で協定が結ばれました。59年であるから、60年代のアフリカ諸国独立前の話です。その結果、エジプトは年間555億立方メートル、スーダンは185億立方メートルの取水が認められています。もともと850億立方メートルの想定しているので、残り8カ国は110億立方メートルしかないことになります。
ちなみに、この数字を日本の水使用実績と比較すると、取水量ベースで年間約831億m3/年。その内訳は、生活用水約157億m3、工業用水約126億m3、農業用水約547億m3です。その水量が如何に多いか、逆に、8カ国で110億m3が如何に少ないかが理解できると思います。
これらナイル川の周辺の諸国は上流側も下流側も1980年代から2010年にかけて人口が急増しています。特に人口が多いのは、エジプトやエチオピアで、それらの国は8000万人を越える人口を持つようになりました。日本の取水ベースと人口だけを単純に考えると、エジプトの555億立方メートルではとても足りない数字になりつつあり、また、エチオピアは、生活用水を日本並みに使うと、100億立方メートルは必要になり、とても計算上は足りなくなります。
特に、上記に記載したように、雨季と乾季の差が激しく、上流部で水を確保しようとすると当然ダムを建設するということになります。その理由でエチオピアで作られようとしているダムが、Grand Millenmium Damです。2011年4月2日に起工式を行っています。Economistによると、このダムには480億ドル(4兆円)の金額がかかり、そのタービンなどの大型機材は中国からの借款によりまかなわれるということ。一人当たりGDPが1000ドルに満たない最貧国が4兆円の投資ですから、そこに貸付を行う中国と将来どういう関係になるのかも想像に難くありません。
<<Wikipediaより>>